無題

「先日までよく連絡がきた人間から全く連絡が無くなったんだよ。どうにも、嫌われたみたいだ。」

なんて、会話をした。

風通しのいいテラスの席で、よく冷えた白ワインを呑みながら。

 

最も気の置けない人物は、

「いいじゃない。何の連絡もせず、ある時会って、それで楽しく呑めるのがいい関係なんだよ。」

なんて。

なんとなく、深入りすべきでない場所には行くな、という、強い意思表示のようにも感じた。

 

その美学が、愛おしく、そして、最も理想とするものであったから、惹かれていたはずなのだ。

もっとも、自分には、そんな崇高な理想を実現することはできない。

沼の淵に立って、その中を覗き見ている時点で、自分も沼の中の世界に取り込まれているのだ。

 

 

最近よく、夢を見る。

いつだったか別れ際に伝え損ねたこと、ほんの少し気がかりだったこと、何気なく交わした口約束。いつかのために取っておいたもの。

そんな他愛もないけど大切にしてたものが、時効になってしまうようで、空っぽになったような気持ちで目が覚める。

 

もう、声さえ、その相手が誰だったかさえ思い出せないのに。