Littlepress JOURNAL

リトルプレスを作ってみたい!という視点から、お気に入りのリトルプレスをご紹介します。

 

「リトルプレスって何?」

個人やグループが自費出版する冊子・雑誌のことで、取次を通さずに配布・販売までを自分の手で行うものを言います。


水玉新聞舎では同人誌やZine、ミニコミなども広く含んでカテゴライズしていこうと思います。

 

「なぜこの時代にあえて紙媒体?」

昨今どんな情報もインターネットから入手できるようになりました。

また、表現をするにしても、手間や時間やお金を掛けずに気軽に発信することができます。

 

 

それなのに、なぜあえてこの時代に紙媒体にこだわるのか?

そう気になりだしたのが、私がリトル・プレスに興味をもったきっかけです。

 

リトル・プレス展なぞに足を運んだりして、実際に手に取ってみて、あえて紙にこだわる理由が見えてきたように思いました。

手に馴染む大きさを工夫していたり、紙の質感を楽しんでいたり、ページを繰るときの読者の心理を考えた構成を計算していたり・・・。

PC画面をスクロールして得るためだけの情報を発信しているのではなく、印刷物を実際に読む動作を大切にした生活雑貨のような存在のものが多くあります。

言わば情報媒体というよりも、作家による「ページを繰る作品」です。

 

 

水玉新聞舎は、そんな「目からも指先からも魅力が伝わってくる」ようなリトル・プレスを勝手気ままにご紹介します。

 

 

 

 

 

 

A3の紙面の表はテキスト情報、裏は地図。8分の1サイズに折りたたまれたペーパーは、マップに適した大きさ。この街ならではの泥臭さを感じさせる紙と印刷の風合いがどこか懐かしい。
A3の紙面の表はテキスト情報、裏は地図。8分の1サイズに折りたたまれたペーパーは、マップに適した大きさ。この街ならではの泥臭さを感じさせる紙と印刷の風合いがどこか懐かしい。

第6回 神保町対決マップ

 

 

 文字と紙の聖地で発掘したフリー・ペーパー、「神保町対決マップ」創刊記念号。

 

 

 

 

 地図というのは、同じ土地をピックアップしていても、作成者のクローズアップの仕方が違えばまったく違う作品になるもの。

 そんな地図の面白みを活かした、独断的(失礼!)「街愛」に溢れた笑えるプレスです。

 

 

 

 

 

 もっとも、完全趣味なる世界に没頭して作ったかのような体でいて、情報のピックアップと整理の仕方が秀逸。

 マップの読者が瞬時に情報をキャッチできる仕掛けがとてもスマートです。

 例えば、「対決マップ」と称しているだけに、表面全面にプロレス対決表を作って情報を整理している。

 会社・お店・スポット等をプロレス選手に見立て、それぞれの特徴や面白みを武器に相手選手と対決させているんです。

 具体的には、「山形紙店VS竹尾見本帖本店」などと、タイトルを付けて、両者の老舗っぷりや経営方針などを取り上げ、優秀な点を対決させる。

 どちらも有名な紙専門店ですが、これを見たとき、竹尾しか知らない読者は、「竹尾には行ったけど、それと並ぶレベルの紙業者があるなら、行ってみたい!」ってなりますよね。

 

 面白いイラストとともに、いろんな選手(お店)同士が対戦しているんですけど、そのユーモラスも然ることながら、興味深い切り口でタウン情報誌としての役割もしっかりと果している優れものです。

 

 

 

 ところで、この紙面、所々に細かく注目建築物や設計士の名前、おすすめの建築関連書籍名が書き込まれているのです。

 なんだか、ちょっと一般読者向けではないコアな業界の匂いが…。

 それもそのはず、このプレスの発行元は建築関連図書専門店の南洋堂書店。

 千代田通りと靖国通りがぶつかるところ。土岐新設計の不思議な建物の中にある本屋さんです。

 

 

 一般読者向けに面白く整理された情報の提供と、建築関連専門書店ならではのツウな情報の提供を両立した太っ腹なプレス。

 これで、フリーだというから、有料プレスはプレッシャーですよね。笑

 

 

¥ take free

 

発行人 南洋堂書店

季刊誌 もっとも創刊号の2009年秋号以来発行されていない模様

執筆 大島健二

デザイン・イラスト ぽむ企画

入手場所 南洋堂書店

HP→南洋堂書店

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bathroom
Bathroom

 

第5回 BunnyのPink Zine

 

 

女性の性の解放をテーマに、女性目線でのエロスを表現するアートブック。

友川綾子と藤井彩子による(あやちゃんコンビ)、ガールズ・エディターユニット「BUNNY」が発信する、Pink Zineです。

 

今回の作品は自らもカメラを持って製作をしているようですが、様々なクリエイターの表現したエロスをエディットしていくということで、これからはクリエイターとの共同作業がメインになってくるのでしょうか。

 

人選の手間もかかる上、人の作った物を編集していく作業の大変さは、(編集アシスタントをやった経験から)なんとなく想像できます。

にも関わらず、こんなことを発想した上、実現できてしまうのは、常に多くを勉強し、かつ、多くのクリエイターとの接触があったからこそなのだなぁと、想像しては感心してしまいます。

 

洗練された装丁は、驚くべきことに、お家印刷で、製本もご自分でなされたとのこと。

経費を押さえるためには取らざるを得ない方法ですが、お家印刷の面倒くささと難しさを嫌というほど知っている自分にとっては、手に取った瞬間、第一に感動したポイントかもしれません。

写真の美しさを紙で表現するには、紙と最もお友達にならなければならない。

紙の表情も風合いも発色も、製本に使っている針がねも、麻ひもも、写真とともにアートブックの一部になっています。

 

 

 

ところで、このアートブックによる最終的な目的は、「作り手と見る人が、それぞれに新しい表現のありかたに触れ、交流してもらえる場とする」こと、とのこと。

実際に展示・販売されていた江戸川橋のキャンドルナイトでは、色んな会話が行き交っていましたよ。

 

 

 

polyrhythm
polyrhythm

今発売されているものは「polyrhythm」と「Bathroom」の2種類。

内容はいずれもポートレイト中心の写真集となっています。

どこにエロスを感じるかは、夜に月明かりの下で見て確かめてください。

それを確かめ合うことも、きっとこのアートブックのコンセプトの1つなのです。

 

 

まだ、2冊目ということで、今後どんな風に発展していくのか、興味深いアートブックPink Zine。

どんどん解放できる瀬戸際、限界に向かって行ってほしい。

 

 

 

 

実は、やってみませんか?とのお誘いを頂きました。

(社交辞令?!笑 いやいや、違いますよ、たぶん!)

ただ、私の表現はアートではなく俗物、エロスではなく卑猥…。

これはまずいでしょう。と、思うのですが。

 

 

でも一方で、彼女達の手に掛った場合に、自分はどんな風に変わっていくのだろう、という興味もあるのです。

 

 

 

これはまさに、私の性の解放が始まっている証拠なのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

¥ 500yen

発行人 Bunny

入手場所 HPでチェックして。

HP→Bunny

 

 

 

 

第4回 Japan Beer Times

 

日本の地ビールだけを徹底的に扱ったフリーペーパー。

まず、このプレスについてを語るためには、横浜地域情報誌YOKOHAMA SEASIDERというフリーペーパーの存在について説明が必要かと思います。

 


2009年頃だったと思うけれど、ある時突然、ちょっと風変わりな地域情報フリーペーパーが横浜中区界隈に現れました。

どこが風変わりかというと、まず、全面バイリンガルという点。

日本語と英語で記事が記載されているのです。

これは、ずっと日本に居つくとなかなか出会えない発想だなぁと思いました。

需要もあるのでは。

特に、フリーペーパーなのに!、というところに魅力を感じます。

 

また、その当時はまだ情報量は少なかったものの、細かいところに審美的な要素を感じたのです。

例えば、広告の出し方一つでも、周囲の記事の雰囲気との調和を気にしていることが感じられたり、ざらりとした紙質が妙に手になじんだり…、大雑把ながらにこれまでに見なかった情報誌であるという印象を受けました。

フリーペーパーは広告との折り合いや予算との関係で、なかなか綺麗にまとめることができないと思っていたのですが、それなりに広告を載せ、広告収入を得ながらもそのハードルがクリアされているように思い、感動したのを覚えています。

(※もっと言うと、それだけ広告の載せ方が綺麗だと、その分広告に注目が行くのではないかと思う。むしろ、広告に機能を持たせる意味でも、時間を掛けて美しくする意義は大いにあるんだろうと思う。まさに一石二鳥なのかも。)

 

発行人の方が、アメリカの方で、横浜に魅せられている、というのを当時噂でお聞きしました。

横浜にまつわる食、文化、アート…など、横断的な情報を載せたプレスで、かつ、手に取った人が「捨てたくない」と感じさせるものを…、そんなコンセプトであることも後に聞きました。

 

「フリーの情報誌は使い捨てだ」という単純な私のステレオタイプが見事に打ち砕かれたことは言うまでもありません。

お金を出して購入する本と違って、何気なく持ち帰るフリーペーパーは、取得者が内容を知らないで入手する場合が多い。内容を見た時に、がっかりしないように、という工夫がなされているのが愛おしく感じます。

 

 

さて、今回ご紹介するプレス、Japan Beer Timesは、YOKOHAMA SEASIDERの弟的存在で、同じ発行人が作成しています。

「BAD BEER IS THE ENEMY.(美味しくないビールは世の中の敵です。)」というキャッチフレーズの下、日本の地ビール好き(発行人は無二のビール好きらしい)によって、日本の地ビール好きのために作成されています。

 

YOKOHAMA SEASIDERと比べると、テーマが極めて絞られており、ビアマニア向け。

いわゆる、「我が趣味を突っ走る」内容となっていて、私の定義するところの「リトルプレス」であると勝手ながらに感じます。

紹介する内容は、横浜に限らず全国の地ビールに渡っていて、取材にかけている費用や時間もバカにならないはず。

それにも関わらず、take freeなのはYOKOHAMA SEASIDERと同様です。

そして、細かい点に、相変わらず審美的視点を大切にされているなぁ、と感じる。

 

 

様々な点をこだわり抜きながら作成したYOKOHAMA SEASIDER。

その発行が安定期に入り、また、知名度が上がったことで、発行人の趣味的な嗜好の詰まったJapan Beer Timesの発行へと繋がったのでは、と勝手に想像します。

横断的な情報誌から、ディープな世界に突っ走ったプレスへ…。

 

この流れを見た時、発行人の「かっこいい仕事ぶり」といった感じで、仕事の進め方も含めて、魅せられてしまいます。

もしかして、当初から作りたかったのは、こっちのプレスでは?などと感じてしまうくらいです。

今後も目が離せません。

 

 

前回から続け様で、酒系の本の紹介になってしまいました!

 

 

 

¥ take free

季刊誌

発行人 Ry Beville

入手場所 横浜市中区界隈で配布

  (筆者は馬車道タップルームで入手)

公式HP

 



 

 

 

 

 

第3回 酒とつまみ

 

飲兵衛なら知っている伝説的存在ともいえる、「酒とつまみ」。

毎回、おバカな酒企画を持ち上げて、飲兵衛達を虜にしているリトルプレスです。

 

 

コンセプト上、写真や紙質などで冊子のビジュアルを整えているわけではない(失礼!)ので、白黒印刷でとにかく情報量が多い。

約80頁に渡り、1ページのうちに割いている写真の割合は3割弱ほど。

それだけ原稿を書き上げることに時間を費やしているわけだけど、値段はたったの300円台というのだから、プレスのコンセプトをここまで詰め込んでいる割にとても経済的です。

 

徹底した酒バカのためのプレス。

これを一気に全部読み干すのはかなりの労力が必要なわけで、つまり、一人飲みをこよなく愛する人間にとっては、何日間かかけてこのプレスを肴にすることができる。

たまにくすりと笑える対談なんかも、話し相手の無い一人飲みでは恰好の肴になることは間違いないでしょう。

 

企画のジャンルも多岐に渡っており、大衆向けの企画では「山下線一周ガード下迷酩酊マラソン」や手作りつまみレシピから、よりディープな企画としては「フィリピンパブの歩き方」まで、多彩。

毎号プレス名の下に掲げられているサブタイトルは、よく考え込まれていて、これを考えるためだけに発行が遅れているのでは、と思わせてしまうほど。

 

 

第14号のサブタイトルは「ふりむくな、うしろには酒がない。」

今号で足かけ4年にもわたった「山手線一周ガード下酩酊マラソンが」が終了。ここまで頑張って、得たものは、「たーっくさん、飲んだだけだった」というオチもお洒落でした。

ここでひとつ特大企画が終わったわけで、転機が訪れた「酒とつまみ」の次号からの企画も大変楽しみです。

 

ちなみに私は定期購読者の一人です。 

 

 

 

¥ 381

季刊

 

発行所 酒とつまみ編集部

入手場所 HPで取扱書店確認のこと、直販もあり

公式HP

 

 

 

第2回 旅手帖 beppu

 

フリーでここまで作りこめるのか!と、感動してしまったプレスです。

開いてみて、その理由がすぐにわかります。

飲食店を沢山紹介してとにかく情報量を増やしページ数を稼いでいる感じが全くしないこと、広告収入の匂いがほとんどないこと、何より、作品のような写真の美しさに目を奪われてしまうのです。

 

散歩人の目線から綴られる写真は、まるで自分の歩幅で進んでいるかのように錯覚させます。

それだけ、ページ数を割いて大量の散歩写真を載せているのです。

一番素敵だと思った写真は、51ページの別府駅前広場の写真。

大きなおじさんが空に向かって両手を伸ばしている銅像の写真です。

おじさんの像から地面に向かって長い影が伸びています。

この銅像の異様さを、影が効果的に演出しています。

この写真は夕方に撮影したものと思われますが、これも地元を熟知しているか、時間をかけないと撮れない写真なのではないでしょうか。

 

勿論別府へも行きたい気分になりましたが、それ以前に、純粋な読み物としても十分に楽しめます。

 

では、一体どうやってこれだけの質のプレスを出せるのか…?

発行は特定非営利活動法人BEPPU PROJECTによって、まちなか情報発信強化事業の委託業務として作成されているようです。

なるほど。

広告収入に頼る必要がないわけです。

 

私の故郷にもこんな事業内容を是非おススメしたい。

内容の美しさといい、配布先の確保といい、自己満足に終わっていない事業内容。素晴らしい。

 

 

¥ take free

発行人 山出淳也(特定非営利活動法人BEPPU PROJECT代表理事)

編集・発行 特定非営利活動法人BEPPU PROJECT代表理事

入手場所 渋谷 only free paper

公式HP

 

 

 

 

 

第1回 ネコメンタリー

 

初めて手に取った時、このネーミングセンスにはなかなか出会えないなぁと感心してしまいました。

言うまでもなく、タイトルが内容全てを物語っています。

また、ネット検索した際、この方のサイトや写真だけが引っ掛かります。

only one な素敵な名前ですね。

「イヌメンタリー」なんていうプレスをシレっと出したらファンから怒られてしまいそうですね。笑

 

紙面にはタイトルと作成者、日付とtwitterアカウント以外に文字は無く、A4の用紙両面に猫の写真が並べられている構成です。

猫の写真のために割かれています。

 

 

個人の方が出しているので、猫好きが極まり、趣味の範疇で作成されたのではないかと想像できますが、それにしても印刷やレイアウトがきちんと作り込んであるので驚きます。

A4用紙1枚だと、冊子を出すよりも負担は少ないでしょうから、時間的金銭的にも無理なく毎月発行を続けていくための方法として参考になります。

一方で面積が小さい分だけ、メッセージ性が強くなければいけないという課題をクリアするのが前提で、私のような気の多い人間には、それを絞るのに苦労しそうです。

 

 

vol.4を入手する際は最後の1枚でした。

猫好きの世界は底知れないので、かなりのファンがいると想像されます。

ファイリングして大切に保管しているファンもいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

¥ take free

毎月発行

発行人 Mitsuo Mastumoto

入手場所 渋谷 only free paper

 その他の入手場所は公式HPより確認下さい

公式HP

 

 

※後日談

2012年5月のGWに、発行人の松本さんとグループ展でご一緒する機会がありました。

なんという巡り会わせでしょう!

ちなみに私は愚作ネコーシカでの出展でした。

相変わらず「趣味のフリープレス」というスタンスで続けておられました。

発行記念のグッズもフリー配布されていて、ファンの数は益々広がっている印象でしたよ。